バスを追いかけろ


私がバイク便を始めてこんなにも心躍り興奮した配送は初めてでした。

秋の観光シーズン。そろそろ温泉旅行なんかも良いかなと思える頃です。

私が都内での配送を終えると、その依頼は私の所へ飛び込んできました。

港北PAで忘れ物をしたバスガイドさんからの依頼で、

ツアーの予定があるので引き返せず、次の目的地まで忘れ物を届けて下さいとの事でした。

箱根方面に向かって走っているので忘れ物をピックアップしたら連絡下さいと電話で打ち合わせをして、

私は港北PAへ向かって出発しました。

港北PAに着いて指定のお店の方に伺うと、レストランでお食事の際にお客様が忘れて行かれたとの事でした。

無事忘れ物を集荷しました。

お客様に電話すると、○○時まで湖尻ターミナルに居るのでそこで落ち合いましょうとなりました。

安全且つ迅速に指定の場所へ向かいましたが、途中渋滞に巻き込まれてしまいました。

湖尻ターミナルに到着してお客様に電話すると、10分前に大涌谷に移動開始してしまいましたとおっしゃって、

大涌谷にしばらく滞在するのでそこで荷物をお渡しする段取りになりました。

箱根のロープウェイを見上げながら山道をバイクで走って行きました。

道中あちこちから湧きあがる間欠泉の湯けむりに視界を遮られながら、山道の走行を楽しんでいる自分に気付きました。

15分程山道を走ると頂上の大涌谷に到着しました。

頂上はより一層湯けむりがすごく神秘的な光景でした。

誘導のおじさんに5分前位に観光バスが通りませんでしたかと聞くと、丁寧に案内してくれました。

するとうかがっていたナンバーの観光バスを発見しました。

発見した時の喜びときたらそれはもうガッツポーズでした。

バスには誰もいない様だったので、お客様に電話するとガイド中だったようですが出てくれて、

バスのドライバーさんがいるのでその方に渡して下さいと言って、電話で話しながら遠くの方で旗を振るガイドさんを見つけました。

私もご注文して下さった事に感謝して深々と頭を下げ、電話口で「ありがとうございました。」とお礼をお伝えしました。

その後バスのドライバーさんに無事荷物をお渡しして、「わざわざこんな遠くまでありがとう。ご苦労様。」と労いのお言葉を頂きました。

長い距離を走っただけにより一層達成感があり、バイク便やってて良かったと心の底から思いました。

帰り道も達成感の余韻に浸りながら安全運転で都内に戻りました。

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